気の使われなさが心地いい荒ぶる漢の店、大元の肉醤麺(ルージャンメン)

この前おもしろい店を見つけたので記録しておくことにする。
田町駅から徒歩5分くらいの、飲食店が集まる通りにその店はあった。
「ラーメン・餃子」ののぼりがホラー書体なのが若干気になるラーメン屋、大元である。

漢の店

店頭には聞き慣れない謎の麺がたくさん並んでた。
空腹時にこんなものを見せつけられては、入店するなというほうが無理である。
適当に空いてるカウンター席に座る。
席につくなり背後から水入りのコップをドンと置かれた。
もちろん無言だ。
それでいいのだ。
客層も100%男。
漢の店である。
外観からも予想していたが、店内の雰囲気は近頃の洗練された感じのラーメン屋ではなく、昔ながらの素朴なラーメン屋だ。
テレビからは昭和歌謡曲みたいなのが流れてた。
こういう雰囲気、嫌いじゃない。
メニューを見ると普通のメニューもたくさんあった。ワンタン麺とかも気になる。
今回は店頭にあった肉醤麺(ルージャンメン)を頼むとこにした。
肉を食べたい気分だったのだ。
漢字の読み方がわからなかったので、コミュ障全開にメニューを指で指し示して注文することに成功。
卓上には味噌が。
これで味噌ラーメンを作れということだろうか。
などと考えていると、厨房からこんな声が聞こえてきた。
「もやしがなくなっちまったよぉ!」
注文した品は、カウンター席の目の前にある厨房で作られているのだが、その厨房で店員のおじいちゃんが何かを探すようにウロウロしていた。
ちなみにこのとき店員は三人いたが、みんなおじいちゃんだった。
「もやしがなくなっちまったよぉ!」
何度も声に出し、なくなったもやしを探して忙しなく動き回るおじいちゃん。
話を聞いていると、どうやら僕が注文した肉醤麺(ルージャンメン)にのせるためのもやしが見つからないらしい。
注文主である僕にも丸聞こえだがそれでもいいのだろうか。
いいのである。
細かいことにはこだわらない。
それが漢の店だ。
おじいちゃんが厨房内を右往左往する姿を見て、なぜか私のほうが申し訳ない気持ちになっていた。

肉醤麺(ルージャンメン)

ようやくもやしを見つけていただき、僕の元にラーメンがやってきた。
肉醤麺(ルージャンメン) 860円。
昼だからかライスがついてた。
サンチュらしきものと肉が一緒に麺に乗っている。
まるで焼き肉をそのままラーメンに移植したかのような麺だ。
スープはピリ辛。
ライスがあってよかった。
麺は細麺で、ツルツルしていた。
もやしも味つけされていておいしかった。探し出してくれたおじいちゃんに感謝。
すこし前に、中華料理屋でラーメンを食べるのにハマっていたことがあるが、そんな感じの味がした。
味わうほどに、懐かしの味が思い出された。
それで後から調べてわかったことだが、実はここはラーメン屋ではなく中華料理屋らしい。
確かに店の看板をよく見ると中華って書いてある。
気づかなかった。
どおりで色々なメニューが充実しているわけである。
ご飯に味噌を乗っけて食べた。
スパイシーな味噌だった。
「ちゃんと仕事しろよぉ! 裏で遊んでばっかいるんじゃねえ!」
夢中でラーメンを食べていると、再び厨房から店員さんの声が聞こえてきた。
もはやこれはパフォーマンスなのではないのか。
一瞬そんな疑いも首をもたげた。
でも違うのだ。
裏事情を客にみせることも気にしない。
客も客で、誰も気にしたそぶりを見せない。
これが日常なのだ。
漢の店である。
こういう雰囲気、嫌いじゃない。

いい感じの気の使われなさ

大元は、近年のサービス過剰気味な飲食店業界に警鐘を打ち鳴らすラーメン屋(中華料理屋)である。
ビジネスマナー? 知ったことではない。
マニュアル化された懇切丁寧な接客もない。
しかしそれが、私のようなビジネス的所作に汚染された人間にはむしろ心地いい。
いい感じの気の使われなさが、逆に落ち着くのである。
気軽に入れる店としては最適だ。
これから暑い夏がやってくるが、定期的に通うことになりそうな予感がした。
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