根暗コミュ障がラーメン二郎三田本店に行って無事に帰ってくるまでの顛末


言わずと知れたラーメン二郎。
巷にジロリアンという人種を生み出し、「二郎はラーメンではなく二郎という食べ物である」といった価値観まで定着させたというのはよく小耳に挟む話だ。
中毒系ラーメン店である。
今回はその総本山である三田本店に行ってきた。
僕の二郎歴は浅く、一度関内の二郎にいったきりなので今回が二回目。
迸るほどの初心者である。
緊張もひとしおだ。
果たして失態を犯さずにおいしくラーメンを食べられるだろうか。

すべては並ぶところから始まる

金曜の夜。
19時頃店に着く。
行列ができていたので、店の場所は初めてでもすぐにわかった。
だいたい20人ほど並んでいたと思う。
ここまでは想定内だ。
二郎初心者であることがバレないようにそそくさと最後尾に並ぶ。
黙々と並ぶ。
しばらく待っていると、店から店員さんが出てきて私のもとで立ち止まった。
さっそく何らかのルールを破ってしまったのかと、背筋に緊張が走る。
店員さんはいった。
「お客さんで麺が終わりなので、あとから来た人にもう並べないって言っといてください」
どうやら二郎初心者であることがバレたわけではないようだった。
ちょうど私のところで麺がなくなる。
これはものすごく運が良かったのではないか。
早めに仕事を切り上げて来たかいがあった。
幸運をかみしめることしばし。
しかし金曜の夜。
閉店時間も迫るなか、けっこうちらほらお客がやってくる。
そんな人たちに、もう並べませんよと伝える私。
皆しょんぼりして帰っていく。
人見知りにはなかなかつらい作業だ。
しかしこれも本店二郎を食べるためだと勇気を奮い起こす。

降り出す雨

その後、雨まで降ってきた。
でも大丈夫。
カバンのなかに折りたたみ傘が入っていたのだ。
今朝の僕のファインプレーに満足しつつそいつを取り出しかけて、思わず手を止めた。
前に並んでる人の大半が傘を差していない。
差そうともしない。
そうか、そういう店なのだ。
直感的に理解した。
ならば従うしかあるまい。
折りたたみ傘を、そっとカバンのなかに押し戻す。
そしてパラパラと小雨の舞うなか、傘も差さずに並ぶ僕たち。
並び始めてから二十分くらいで折り返し地点に来た。
二郎本店は店の構造上、列が途中で折り返すのだ。
二郎本店はこういうふうに列が形成されている。
折り返し地点の壁にこんな貼り紙?を発見した。
傘はあるのだ。
それは皆わかっている。
差さないだけなのである。
何かの記念Tシャツも売ってるらしい。
ようやくゴールが見え始めた。
お腹もいい感じにすいている。
店のなかでは店員さんが必死に作り、客が必死に食べている。
ここは戦場。
一瞬の気の緩みが命取りになる。
ウーロン茶がずらりと並ぶ自販機。

待望の小ラーメン

並び始めてから一時間ほど経っただろうか。
ついに店の中へ。
入り口すぐに食券機がある。
普通のラーメンを購入。
時間が遅かったためか、ラーメンと大ラーメン以外は売り切れていた。
このノーマルラーメンは、大ラーメンと区別するために小ラーメンと呼ばれているようだ。
大でないものはすべて小なのである。
店のなかに入ってからは早い。
小ラーメンがきた。
ニンニクマシ。
麺がこぼれ落ちそうなくらい盛られている。
ものすごいボリューム感だ。
周りの人は全部マシとかマシマシとかしてた。
よく食べきれるな。
ジロリアンにとって二郎は別腹なのかもしれない。
彼らの元に、もやしがかき氷みたいにてんこもりに盛られたラーメンが置かれていくのを見て、野菜マサなくてよかったーと思った。
ひたすら食べる。
さらに食べる。
ラーメンは伸びてしまうから早めに食べなければならない。
余計なことを考える時間はない。
麺をつまみ、口に入れ、咀嚼する。
食べている間、自分はただそれだけを行う機械だ。
嫌なことも全部忘れる。というか考えてる暇がない。
ラーメンを食べているときだけが、人があらゆる雑念から開放され、最もピュアでいられる時間なのだ。たぶん。
完食。

謎の達成感

烏龍茶を飲みつつひたすら食べたのが功を奏したのか、意外にもそんなに脂っこさは感じなかった。
何かが突出した特別なラーメンというよりは、普通のおいしいラーメンという感じだ。
ただやはり量が半端ではない。
食べきったときには、ついにやり遂げたんだと達成感が棟の奥からこみ上げてきたほどだ。
以前、ラーメン博物館で一晩に普通サイズのラーメンを三杯食べたことがあるが、そのときと同じくらいのお腹のきつさを感じた。
小ラーメンでこれである。
大ラーメンの全部マシなんかを頼んでしまった日には、いったいどうなってしまうのか。
それを完食したときに、どんな感情を抱くことになるのか。
興味の尽きないところである。

ラーメン二郎三田本店は根暗コミュ障でも入りやすい

この日、僕が最後の客だった。
帰り際、店員さんが優しく声をかけてくれた。
並んでる間、僕が行列が増えるのを阻止していたことに対して感謝の言葉をかけてくれたのだ。
なんていい店なんだ。
人に優しくされた経験の乏しい僕は、すぐにそう思った。
正直、ラーメン二郎には怖いイメージがあった。
独自のルールやコールの存在が、それに疎い人間に排他的な場所なのだと錯覚させていた。
そういった思い込みが、いままで二郎から足を遠ざけていた理由のひとつでもある。
僕と同じように、一度は食べてみたいけどなかなか入る勇気がでないという人はたくさんいるのではないだろうか。
そういった人たちに伝えたい。
少なくとも二郎本店はまったく怖い場所などではなく、僕のような二郎初心者の、なおかつ人見知りで臆病な人間に対しても優しい店だった。
だから特別気負う必要はない。
難しいことは考えず、普通に食って普通に出て行けばいいのである。
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